はじめに
子どもが親の薬を準備し、学校から帰るとすぐ家族の世話をし、夜中に起こされる——そうした日常が「当たり前」になっているご家庭が、身近なところにあります。
ヤングケアラーとは、本来は大人が担うと想定される家事や家族の世話、介助などを日常的に引き受けている、おおむね18歳未満の子どもを指す言葉です。
この記事は、子どもがケアを担っている状況に気づいた大人——ケアを受けている家族の側の大人、別居の親族、学校や支援の関係者——に向けて書いています。
もしあなた自身が家族のことを一人で抱えながらこの記事を読んでいるなら、まずこれだけ伝えさせてください。家族のことを誰かに話しても、責められることはありません。一人で決めなくてよいことが、たくさんあります。
相談先として、お住まいの自治体のこども家庭センターやヤングケアラーの相談窓口、高齢の家族のことであれば地域包括支援センターがあります。窓口の名称は自治体によって異なるため、地域の窓口で確認してみてください。
子どもが担っているケアのうち専門職に渡せるもの
子どもが担っているケアの多くは、介護保険や障害福祉のサービスとして専門職が代わって行える内容であり、「家族の中で誰がやるか」という問題ではありません。
| 子どもが担っているケアの例 | 主な担い手 |
|---|---|
| 食事の用意・買い物 | ヘルパー(訪問介護)・配食サービス |
| 掃除・洗濯 | ヘルパー(訪問介護) |
| 服薬の管理・確認 | 訪問看護師・薬局 |
| 体調の確認・バイタル測定 | 訪問看護師 |
| 入浴の介助 | ヘルパー・訪問入浴介護 |
| 通院の付き添い | ヘルパー・家族以外の支援者 |
| きょうだいの世話 | 一時預かりや保育サービス |
渡せるかどうかは、ケアを受けている人の状態や介護認定の有無によって変わります。「うちの状況で頼めるのか」という確認から始めても構いません。地域の窓口で一緒に整理してもらえます。
すべてを一度に変える必要はありません。今一番負担になっているケアを一つ外に出すことから始めると、動きやすくなります。訪問看護が担える範囲については、以下の記事もあわせてご参照ください。
訪問看護とは?初めて聞く方に仕組みや対象者、利用のきっかけをわかりやすく解説
ご家庭に伺って、子どもがケアを担っていると気づいた場面
<ある訪問看護ステーションの例>
お子さんが服薬の準備や食事、排泄介助などを日常的に担っていたり、ご本人の体調や受診予定を大人以上に把握していたりする場面で気づくことがあります。また、訪問中もご本人のそばを離れず、看護師への説明や判断まで担っている場合は、「お手伝い」の範囲を超えて負担がかかっていないか確認します。
最初から「ヤングケアラーです」と決めつけるのではなく、お子さんとご家族それぞれの話を聞き、何をどのくらい担っているのかを整理します。そのうえで、訪問介護など大人の支援者へ移せるケアを提案し、必要に応じてケアマネジャーや医療ソーシャルワーカー、学校、地域の相談窓口と連携します。ご家族を責めるのではなく、お子さんが学校生活や休息の時間を確保できる体制を一緒につくることを大切にしています。
子どもに担わせるべきではない医療に近いケアはどれか
服薬の管理や吸引、体位変換といった医療に近いケアは、本来子どもが判断して行う領域ではなく、看護職や医療機関が担う範囲に含まれます。
子どもが引き受けがちな、本来は専門職が担うケアには次のようなものがあります。
- 薬の種類・量・タイミングの判断と準備
- 医療機器(吸引器・酸素など)の操作
- 痰の吸引・胃ろうの管理
- 床ずれの処置・体位変換
- 体調の変化を見て受診するか判断すること
- 点滴や処置後の確認
子ども本人は「自分がやるしかない」と考えていることが多く、何が専門職の範囲に入るのかを判断できる立場にありません。これまで担ってきたことを否定したいのではなく、引き継いでくれる相手がいるということを知ってほしいのです。
医療的なケアの内容と可否は個別の状態によって決まるため、主治医や訪問看護師への確認が必要です。「うちの場合に頼めるか」という相談から始められます。
医療的なケアを子どもが担っていたご家庭での対応
<ある訪問看護ステーションの例>
まずは、飲み忘れや重複服用につながりやすい服薬管理、体調変化の判断など、子どもが責任を負っている部分から見直します。訪問看護で薬の整理や残薬確認を行い、服薬カレンダーなどを活用しながら、必要に応じて薬局やヘルパーとも役割を分担します。医療的な処置についても、訪問時に看護師が引き受けるだけでなく、子どもに頼らなくても続けられる体制を関係職種と整えます。
支援に入ったあと、お子さんが薬の時間を常に気にしなくなり、学校や外出の予定を優先できるようになったケースがありました。ご家族からも「子どもに任せるしかないと思っていた」と話があり、専門職へ相談することへの抵抗が少しずつ和らぎました。お子さんがご本人と介護以外の話をしている姿を見たときに、家族として過ごす時間が戻ってきたと感じました。
ケアを受けている家族に支援を入れるという方法
ヤングケアラーへの支援は、子ども本人に対して行うだけではありません。ケアを受けている家族に在宅サービスを入れることで、子どもが担っているケアそのものを減らすという方法があります。
親や祖父母の側にヘルパーや訪問看護が入れば、子どもが担っていたケアは自動的に減ります。子ども本人に何かを変えさせようとするより、先に家族側の体制を整えるほうが、負担が早く軽くなることもあります。
相談の入口は状況によって異なります。
- 高齢の家族のことであれば:地域包括支援センター
- 障害のある家族のことであれば:相談支援事業所
- 子どもの側から動く場合は:こども家庭センターや学校
家族が支援を受けることを拒んでいる場合や、申請の手続きを進められない状況でも、第三者(子どもの知り合い、学校の先生、支援者)から相談を始められます。
子どもが家族のことを話すことで「家庭に問題があると見られるのではないか」と心配する場合があります。相談窓口は家族を責めるための場所ではなく、使えるサービスを探すために話を聞く立場にあります。相談したことで家族が不利な状況に置かれる前提ではありません。
夜間のケアと学校生活への影響をどう切り離すか
夜間のケアによる睡眠不足は、学校生活への影響として最も表に出やすいものです。遅刻や欠席、授業中の居眠りといった状態の背景に、夜間の見守りやトイレの介助、体調急変への不安がある場合があります。
夜間のケアを専門職や制度に移すことで、この影響を切り離せる可能性があります。
夜間に対応できる体制としては、24時間の連絡ができる訪問看護、夜間対応型の訪問介護、短期入所(ショートステイ)やレスパイトなどの組み合わせがあります。どこまで対応できるかは地域や事業所によって異なるため、ケアマネジャーや相談支援専門員に確認する必要があります。
学校に事情を伝えておくことで、出席や課題の扱いについて配慮を相談できる場合もあります。進路や就職を先に諦める必要はありません。
夜間のケアをご家族以外が担えるようになった例
<ある訪問看護ステーションの例>
夜間の吸引や体位交換、排泄介助、見守りなどが必要で、ご家族だけでは休息を取れない場合には、24時間対応の訪問看護や夜間対応型の訪問介護、短期入所・レスパイトなどを組み合わせて負担を減らすことがあります。特に、子どもが夜中に起きて対応している場合は、睡眠や学校生活への影響が大きいため、できるだけ早くケアマネジャーや相談支援専門員へ共有します。ただし、一つの事業所が一晩中対応できるとは限らないため、利用できる制度や地域の事業所を確認しながら体制を整えます。
ご家族からは、「夜中に何度も起きるため眠れない」「吸引が必要になるかもしれず、子どもだけを残せない」「急変したときに救急車を呼ぶべきか分からない」といった相談があります。訪問看護では、夜間に起こりやすい状態と対応方法、連絡する目安を具体的に整理し、緊急時の連絡先も共有します。夜間のケアを家族だけの責任にせず、専門職へ相談できる状態をつくることが大切です。
ヤングケアラーについてよくある質問
Q:ヤングケアラーかどうかは、どこから当てはまると考えればよいですか。
時間数などで線が引かれているわけではありません。学校や生活に影響が出ている、あるいは年齢に見合わない責任を負っていると感じる状態であれば、相談の対象になります。
Q:家族のことを相談すると、家庭に問題があると見られてしまわないでしょうか。
相談は家族を責めるための手続きではありません。窓口は使える支援を探すために話を聞く立場であり、相談したことで家族が不利になる前提ではありません。
Q:親が支援を受けることを嫌がっています。それでも相談できますか。
相談できます。本人以外からの相談も受け付けており、本人がどう受け止めるかを含めて、進め方を一緒に考えてもらえます。
Q:高校生や大学生になっている場合でも、支援の対象になりますか。
対象になる場合があります。年齢による呼び方は変わりますが、支援の枠組みは自治体ごとに異なるため、お住まいの地域の窓口で確認してください。
Q:学校の先生に話しても、何か変わるのでしょうか。
学校は自治体の窓口や支援機関につなぐ役割を持っています。出席や課題の扱いについて配慮を相談できる場合もあるため、話しておく意味はあります。
Q:きょうだいの世話をしている場合も、サービスを使えますか。
きょうだいの状態によって使える制度が変わります。障害のある家族への支援は相談支援事業所が窓口になるため、まずはそこで確認するのが確実です。
まとめ
ヤングケアラーの状況を変えるために必要なのは、子どもの頑張りを認めることではなく、担っているケアの一つひとつを誰に渡せるかを具体的に確かめることです。
一度にすべてを変える必要はありません。負担の大きいケアを一つ外に出すだけでも、生活は変わります。
ケアを受けている家族に在宅の医療的な支援を入れることが、子どもの負担を減らす直接の手段になります。相談や契約は大人が行う前提で、まずはお住まいのエリアで対応できる訪問看護ステーションを探すことが、体制づくりの入口になります。
担っているケアを専門職へ渡す体制づくりを「あす看マッチ」がサポートします
ケアを受けているご家族に訪問看護を入れることを検討されている方は、訪問看護検索サービス「あす看マッチ」をご活用ください。あす看マッチでは、お住まいの地域や必要なケアの条件から、ご本人やご家族にとって最適な訪問看護ステーションを簡単に検索・マッチングすることができます。
子どもが担っているケアを一つずつ専門職へ移していくために、地域の訪問看護ステーションとのつながりが体制づくりの第一歩になります。